ショップのなかはお宝英車だらけ
1台も手元に残ることなく完売
バイクはバーター貿易とは別で現金払って仕入れてくるんですけど、薄利多売でとにかく売りまくろうって思ってました。でもそれだけじゃ面白くないんで、自分のバイクや知り合いのバイクのカスタムもやるわけです。そうこうしてるうちに、そっちの方もなんとか商売になってきて、作ったバイクをたまに(ミスターバイク)BGに載せてもらったり。最初はそんな感じでしたね。
ショップで作るカスタムは当時からZメインだったんですか。
自分で扱うのはZメインでいこうって最初から決めてましたけど、売り物としては当時、英車の方が全然価値が高かったし、実際いい値段で売れました。当時扱ってたBSA、トライアンフ、いま持ってたらお宝だったと思うんですけどねえ。DBD34ゴールドスター(BSA)とか、店に2台3台転がってるの普通でしたから。オーストラリアで英車の価値があまり高くなかったのと、オーストラリアドルが当時68円くらいだったんで、為替差益でえらい儲かったんです。
「DBD34ゴールドスター」とか「為替差益」とか、そういうフレーズが和久井さんの口から出てくるの、すごく違和感ありますね(笑)。面白いけど。
そんなこともあって当時のことを振り返ると、もったいないことしたなってことが山ほどありますよ(笑)。英車のこともそうだし、当時はZ2がこんなに高値になるとは思ってもみなかったですから。
ロケットゴールドスター(BSA)なんて、昔は値段がつかなくて「捨てちまえこんなもん」みたいな扱いだったんですよ。もうちょっと旧いものに対する知識があれば、いろんなもの保存できたのにって、つくづく思いますねえ。
サンダーバード6T(トライアンフ)も2台あったんですよ。フルオリジナル。一発でエンジン掛かってコンディションも最高、カラーは黒と水色で。T6ってマーロン・ブランドが映画『乱暴者(1953年公開。原題:THE WILD ONE)』で乗ってたバイク。同じトライアンフでも110タイガーは当時から人気あって高かったです。この頃の英車って乗ってもかなり速いんですよね……。
ええと、話の内容が、「上物のバイクを安値で売って後悔してるブローカー」みたいになってますけど。
そういうわけで工具類もUSインチは当然持ってますし、ブリティッシュ・スタンダード(BS)とかウィットワース(いわゆるイギリス・インチ)なんかもいまだにあります。全然使わないから、今じゃどれも錆びついちゃってますけどね。
英車のオーナーがブルドックに来ても修理くらいはやってもらえるわけですか。
そうですね。修理、整備くらいは今でもできます。工具は揃ってるんで。