ひたすら組んでバラす。
この繰り返しから見えてきたもの
メーカーが指定しているピストンクリアランスにしても、ホーニングの溝の深さ次第で微妙に変わってきますしね。そういった諸々含めてどう詰めていくかっていうノウハウは、実際に組んで、バラしてアタリを見てっていう繰り返しのなかで得ていくしかないんですよね。いくら自分で考えて、これはいいだろうと思っても、それが本当にエンジンにとっていいことなのか、悪いことなのかってのは1万㎞、2万㎞と走らないと判断できないこともありますし。
最初はだから、本当に手探りでしたね。自分のバイクをチューニングしたり、仲間内のバイクでいろいろやらせてもらったり。寸法出して組んで、走らせて、バラして目で確認して、また寸法測ってっていう、ひたすらそれの繰り返し。
修行時代ってそういうもんだからしょうがないんでしょうけど、聞いてるだけで頭痛くなってきますね(笑)。膨大なコスト、リソース(時間、手間含む)を注ぎ込んでもセンスと学習機能がなければ、腕は1㎜も上がんないという。
唯一の救いは、こっちは空冷エンジン、とくに4気筒のZに特化してたってことですよね。これが水冷、空冷、全メーカー対応みたいな話だったら、ここまでのことは正直できてなかったと思います。
ウチは空冷Z専門でやってるので、ある程度コスト度外視で詰めていくこともできるし、必要となれば専用の治具を作ったりもできる。ここが専門でやってる強みだと思うんですよ。ピストンクリアランスにしても、ホーニングの(研磨)取り代にしても、Zに関しては、かなり細かい部分も含めてノウハウあるわけです。それはやっぱり選択と集中が効いたと思うんですよね。
そういう感じでやってますから、エンジン・トラブルが出たとしても、これは誰の責任でもなくて、全部自分らの責任なわけですよ。だから寸法も細かい部分の仕上げも、組みも、全部手抜きなし。手抜いて壊れたら、怒られるの自分たちですから。もちろんZは旧いから壊れるって言わせないぞっていう、専門ショップの意地みたいなものもありますけど。
チューンド・エンジンの1年保証なんてのも、そういう体制でやってなかったら、とてもじゃないけど責任持てないですもんね。
Zの内燃機加工に関しては、これで絶対大丈夫っていうノウハウができた時点で、「じゃあ1年保証とか、つけちゃおうか」っていうことになったんです。たしかに内燃機屋さんに頼んでたら、ここまでのことはできなかったでしょうね。
ある意味、空冷Z専門の内燃機屋だと。なんでもできない代わりに空冷四発に関してなら、ヨソには負けねえぞと。
そういうことなんですよ。内燃機加工を自社でやるようになってノウハウが大体確立されてきて。で、その頃にはコンプリート製作もかなりの数手がけるようになってたんですね。それがGT−M(=Genuine Tuning Machine。ブルドック製コンプリートの名称)っていう形に集約されていくわけです。