オリジナルパーツには
ショップの色は絶対出さない
ところで最初に出したオリジナルパーツって何だったんですか。
最初に出したのはマフラーで、これは某有名マフラーメーカーのHさんにどうしてもって頼み込んで作ってもらったんですよ。ぼくが頼みに行ったときは「このマフラーも初回ロット作って終わりかな」と思われてたらしいんですね。実際、そういうオーダーって多いらしくて。
なんですかその強引な匿名は(笑)。でもオリジナルマフラーつくりたい→初期ロット20本作って追加オーダーかからずそれっきり終了ってパターン、たしかに多そうですよねえ。
ウチの場合は初回ロット50本でお願いしますってことでお願いしてきたんですけど、じつはその時点で半分の25本は売れてたんですよ。ウチのお客さんに「じつは今度、これこれこういうところでオリジナルマフラーを作る。こんな仕様だ」って話したら、買いたいって人が25人いたんです。
まだ影も形もないマフラーを買いたいってお客さんが25人って、お客さんもだんだん店に似てくるってことなんでしょうか。
頼んでる人が人ですから、モノは絶対いいし、各部仕様にしてもウチがこういうのがほしいっていう要素をいろいろ盛り込んでるわけですから。見ないで買っても後悔させないって、こっちもそれくらいの意気込みでやってました。それも大きかったと思います。
その頃にはコンプリートも年間何10台というペースで作ってたんで、つくっているコンプリートにオリジナルマフラーを装着して、マフラーの在庫がなくなったら追加オーダーしてっていうのを繰り返しているうちに、これもまた外売り(一般販売)が伸びてきたんです。
ホイール(ラボランテ)のときもそうだし、いま聞いたマフラー(ウィンマッコイ)もそうですけど、和久井さんとこのパーツって、なんでお客さんやマーケットに受け入れられるというか、ブランドとしてキャラが立ったんですかね。
ブランドが確立できた最大の理由は装着イメージをはっきり提示できたっていうのが大きかったと思うんですよ。コンプリートで仕上げたバイクに付いていれば、やっぱりオリジナルパーツもカッコ良く見えますから(笑)。
ホイールもマフラーも、モノがいいのは最初っからで間違いないんですけど、それがノーマルっぽいバイクに付いてるのと、フルカスタムのコンプリートに付いてるのとでは、かなりイメージが違ってくるんですよ。
オリジナルパーツは自社のコンプリートマシンに装着した状態で見せる。イメージをよくするため、そんなところにも気を使ったという
たしかに誰でも「オレのバイクもゆくゆくはこんな感じにしたいんだ」って思いながらマフラーつけるわけですもんね。8耐レーサーや80年代のAMAスーパーバイクについてるのと同じマフラーですっていうのと同じ手法。イメージ喚起力の違いとか言ったら小難しいですけど、要はそういうことですか。
あとは単純にウチの名前がついてないっていうのも大きかったと思いますよ。ウィンマッコイにしても、たとえば「ブルドック・フルチタンエキゾースト」とか、そんな感じの商品名だったら、今ほど売れてないと思うんですよ。よそのショップの名前がついたマフラーって、カスタムショップにしてみれば使いにくいというか、仕入れるのに抵抗あるでしょう。ぼく自身、そういうとこあるし。
ブランドをショップから切り離して確立する。これがポイント。だから削りモノパーツにしても、ウチのはウィンマッコイってブランドで展開していて、ブルドックっていうショップ名はどこにも入ってないです。
あの、ちょっと質問なんですが。
なんでしょう。
いま和久井さんが説明してる、そのブランド戦略って、オリジナルパーツを展開し始めるときから意識してたんですか、もしかして。
意識してました。ウチはアンチも多いし、まわりからよく言われないことが多かったんで(笑)、どうしたらショップの色を消せるか、そこはけっこう重要なポイントだと思ってました。売れなかったら元も子もないわけだし。
なんでそうなんでしょうかね。
やっぱり出る杭は打たれるってことなんじゃないですか。オリジナルパーツどんどん出して商売も伸びてるってことになると、会ったことなくても「なんだ、あの野郎」って思う人がいても不思議じゃないですよ。世の中ってそういうもんですから。
いらぬ軋轢を回避するためにもパーツブランドのネーミングは大事だと。ネーミング以外の機能面では。
他社のパーツを使っていると「ここの機能がこうなっていたらいいのに」とか「ここのデザインをもう少し直したい」とか、そういうことがけっこうあるんですよね。でも、それをパーツ作ってるメーカーやショップさんに直接言うのって、けっこう微妙な話じゃないですか。
だったら「こうだったらいいのに」という要素を集約して、自分とこでオリジナルパーツをつくったほうが話が早いんじゃないのって思ったわけですよ。もちろん「カスタムに使うパーツを自社ブランドでかためたい」っていう野望的な面もありましたけど(笑)。GT-Mって看板掲げてコンプリート制作をするなら、そこは避けて通れない道だろうなと。
……とまあオリジナルパーツってリスクもかなりあるんですけど、そのリスクさえ負うことができれば、得るものも大きいと思うんですね。
なんか、ものすごく強引に話をまとめにいってませんか、和久井さん(笑)。